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座る高さ(SH)

公開日: : 最終更新日:2020/02/03 紹介


今回は、座る高さ(SH)について。

座る高さSHは、Seat Height(シートハイ)の略称ですが、イスを利用する上で一番大事な寸法の一つです。イスと言われるものの目的である「座る」の主要な寸法です。

SHはクッション性のあるソファと、硬めのソファとの違いで同じSHではあっても座るとクッションの沈みで高さが違ってきます。
内部がコンパネ下地の場合、ウェビングベルトの場合、ウェーブバネの場合、コイルスプリングの場合などなど、内部の構造やクッション材で座の沈み方が違ってきます。
また、水平な座面と後ろへ傾斜がかかっている座面の場合も同じ高さではあっても当然違ってきます。SHの高さ位置は、異なる解釈などもあるようですが、いづれにしても上記への配慮は大事ですね。

気を付けたいケースはいくつかありますが、その1つに「ハイカウンター」のときのカウンターチェアーのSHがあります。

カウンターの厨房の高さは、排水や使い勝手などの関係もあり、とても大事な押さえるべき寸法なのですが、カウンターの高さを厨房器具の高さから追ってくると、器具の高さなどからH1100などの結構高いカウンターになってくるケースがよくあります。すると、多くの既製のカウンターイスが、低すぎて使えない場合が多くなります。 全く無いわけではありませんが、アイテムがかなり少なく限られてきます。
その為、カウンターの厨房側の床を下げたり、逆にカウンター客席側の床を上げて工事したりします。

カウンターH1100の場合は、イスのSHは800ぐらいが標準になりますが、SH800の店舗イスはあまり既製品には多くありません。アイテムが少ないのには、理由があります。
SH800という高さのイスの場合、使う人が座ったり、ましてや降りる動作をする場合、非常に危険な高さになってしまうからです。
SH800の位置の場合、座った人の靴底の位置は平均的には約450~460程度下がった位置と思われます。つまり、床からすると340位の位置にイスの脚乗せが必要となります。そして、その340の高さから人が一気に床に降りるのはまず無いと思いますので、更に低い位置にもうひとつ脚乗せが必要になります。ここでカウンターの腰壁側にその脚乗せを設置するのですが、この場合には床から約250程度の高さ位置が限度かなと思われます。

ここで、座が回転しない4本脚のハイカウウンターイスに座っていて、イスから床へ降りるときの動作を想定してみましょう。
座っているときイスには自分の体重を掛けている訳ですから、降りる場合にはカウンター自体につかまって、お尻や腿でイスを後ろへ押しながらH250の位置の脚乗せに片足をかけて床に降りる訳です。皆さん、経験がおありと思いますが、お尻や腿でイスを後ろへ押しても、イスは床にカタカタと引っかかり中々うまく後ろへいってくれません。それをH250の位置で片足を掛けながらするわけですから不安定この上ありません。もし、カウンターにつかまった手や脚乗せに乗せた靴底が滑ったりしたらどうなるでしょう。・・・あまり、想像したくない状況です。
イスを後ろへ押さなくてよかったとしても、高齢の方や女性の方(とくにスカートをはいた方)にはSH800のイスから降りる動作はとても危険な動作ではないかと感じます。

結局は、危険に感じられるお客様は、その席を利用するのを敬遠されてしまいがちになるでしょう。
もし予算やデザイン、お店の使い勝手には、良かったとしても、これは、やはりお客様目線の考え方からすると、あまりいいことではない気がします。結果的にお客様が減って売り上げが落ちれば本末転倒ではないかと感じます。

勿論、脚乗せ位置を細かく計算配慮したイスやカウンターをオーダーで製作すれば問題ないかと思いますが、コストは結構UPします。工事のときカウンターの客席側の床を上げたり、厨房側の床をハツって掘り下げる費用もそれなりに予定しておくべきでしょう。
このような「ハイカウンター」をご希望の場合は、コスト・安全・デザインの配分で、とても悩むポイントだと感じますが、お店のイスに関してはよく考慮・相談して進められる必要があるかと思います。

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