柔らかい木質を堅くする技術
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最終更新日:2018/09/07
紹介
以前のブログ(ロシアの家具材料)で針葉樹の材料のことを取り上げました。
通常、家具材は木質が堅い広葉樹を使います。針葉樹は表面の木目などは綺麗なのですが、道管(木が養分・水分を吸収する管)や木質が荒いため割れたり折れたり、キズがつき易いので、家具材としては使いにくく、一般的には構造材(建物や家具などの内部で使う材)や柱として使われるのが多いものです。
既にご存知の方も多いかもしれませんが、最近、新しい加工方法が開発されたようです。「針葉樹を広葉樹に変える」ということで「ケボニー」という加工技術です。
サトウキビやトウモロコシなどの廃棄物から作った溶液を針葉樹材に圧力を加えながら含浸させてから、加熱・乾燥させるようです。すると比重は数十パーセントも上がり、材の性質が永久に広葉樹化され強度や寸法安定性もあがり、そのうえ腐れにくくなるとのことです。30年保証の品質で、ノルウェーのエコラベルも取得しているようです。
何か夢のような技術ですね。
広葉樹は成長が遅く(樹種にもよるが成木になるのに約150年と言われます)乱獲の為、価格の高騰や自然破壊につながっています。それに比べると針葉樹は成長も早く(約40~60年ほどで使える)価格も安いのですが、木質が柔らかすぎて用途が限られていました。ケボニー化の技術によって針葉樹の使用用途が大きく広がれば、木を使用する多くの業界にとって、また自然環境にとっても大変素晴らしいことだと言えます。価格はまだ、広葉樹と同じくらいとのことですが、技術や量産化が進めばもっと手ごろに手に入るようになるのではと思います。
特に日本の場合、全国に植林されている針葉樹の杉材やヒノキ材は、もう十分な伐採時期にきているにもかかわらず、業界の後継者も激減して山はかなり放置状態と言っても過言ではない状況でしょう。勿論、木材を切り出し製材するまでの手間がかかり過ぎて価格が輸入材の価格に追いつかないという問題もあるでしょうが、用途が大きく広がれば資源材料そのものはあるわけですから先進のIT技術・ドローン活用などで工夫すれば十分解決できる可能性があるような気がします。私も以前、ヒノキのテーブルとイスを和食の店舗に納めさせていただいたことがありますが、キズの付きやすさがなければ綺麗な木目だからもっと突板でも使えるんだけどな~とデザイナーさんが言っていたことを思い出します。(話は変わりますが、杉やヒノキの植林された成木の山の多さに関しては、個人的には国産材活用がもしか、花粉症の低減につながりそうな予感がしていますが・・・。)
何にしても、このような技術は自然環境など地球的に大きな貢献の可能性があるわけですから、あまり特許などの高額な制約はハードルをできるだけ低くして頂いて、早くオープンに広めていただければと感じます。まだいくつかの課題が残っているかもしれませんがこの技術が1日も早く普段使いの材料になってほしいものです。
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