張り
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最終更新日:2021/10/10
紹介
店舗のイスやテーブルのカタログも各社、最近、新しいカタログを発刊しています。傾向として、曲線の綺麗なモールドウレタンタイプの小イスが増えているように感じます。
モールドタイプは、型にポリウレタンをそのまま発泡成型したり、スチールや樹脂材を芯材として、軟質モールドウレタン成型したタイプなどがあります。モールドウレタンのイスは、鋳型・金型が必要で、そのコストが掛かりますが、シャープなデザインや曲線のデザインなど形状のの自由度が高く、複雑なデザインのイスを作ることができます。また同じ型ですので量産にも適しています。
ただ、張地を張る場合は注意が必要です。曲線のあるデザインのイスの場合、伸縮性のあまりない張地だと仕上げの張加工のときにシワが寄りやすくなります。張りと縫製の精度が要求され、イスの形状によっては、張地の種類が限定され、それ以外の張地では製作を断られるケースもあります。
よく小イスの背の後ろがファスナー式になっているタイプのイスを見かけます。これは勿論、張地をクリーニングする為に脱着できるタイプもありますが、曲線をシワなく綺麗に張るための張り・縫製の工夫の為のみの加工(当然、脱着できない)の場合もよくあります。
海外の有名デザイナーズチェアもそうですが、古くなって張替えをしたいとき、イスによっては技術的に張れる張り屋さんが限られることもあります。
少し前の話ですが、知り合いの方からの相談があり、彼の知人が小イスを張り替えたけど、仕上りに問題があったようで話を聞いて欲しいとのことでした。その方から電話があり、現物を見せてもらうことになりました。
「近くの小さな張り屋さんにこのイスを張り替えてもらったんですけど、こんなに仕上がりがボコボコしてるんですよ。このイスは、うちじゃやりたくないって、そこの張り屋さんに言われたけど、無理に頼み込んだから・・・。」とのことで、これ以上綺麗にできないと言われたそうです。
なるほど! 確かにビニールレザー張りの小イスの表面が、まだらに凸凹しています。小イスは曲線のカーブがかかったモールドのイスです。さては・・・、と原因の想像はつきましたが、一旦、現物を預かって、当方の張りの職人さんのところへ持っていきました。
「このイスは、ノリをつけて張ってるよ。このモールドタイプは適当に張地を剥がすと一緒にウレタンもボツボツと剥がれて、仕上が汚くなっちゃうよ。」とのことでした。
やっぱりね! 最初の製造段階からか分かりませんが、このイスはモールドウレタンの曲線を、シワが出たり張地が本体から浮いてこないようにノリを付けて張ったイスのようです。その為、張地を剥がすと張地にくっついたウレタンが、ボツボツと剥がれてきて、その上に薄いウレタンを載せても、表面のビニールレザーがその下地の凸凹を拾ってしまいボコボコに見えるように仕上がるようです。
「ノリ付いてるから丁寧に剥がさなきゃダメだよ!かなり時間かかるけどね。」っと職人さん。
お客様にその内容と事情を説明すると、どうしても愛着のあるイスのようで、今より少しでも見栄えが良ければいいのでやり直して欲しいとのことでした。
結局、当方の職人さんでウレタンを補修して少し硬め・厚めのウレタンを1枚のせて、うまく仕上げてもらいました。
綺麗に仕上がったので、お客様にはとても喜んでいただきました。
私達はイスに接したとき、その形状や張地の色や柄、座り心地に心を奪われます。そんな時、縫い目のライン、折り返しの処理や意図的なシワの寄り方など、職人さんの張地の縫製や張りの技術などにももっと目を凝らしてみられたらいかがでしょう。イスを張り上げた職人さんの息遣いとこだわりが感じられるかもしれません。
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