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イスの座り心地

公開日: : 最終更新日:2018/09/07 紹介


 郵便でレターパックを送ろうと、とある郵便局に寄りました。
入口を入ると、まだ新しい白いビニールレザー張りのベンチソファが並んでいました。
カバンから送るものを出そうと待合いのベンチに腰を下ろしました。
腰を下ろすとクッションが柔らかすぎてゴリッとお尻がベンチ座の内部の木部に当たった底当り感が・・・。  あ~~クッション性悪いな~。
 頻繁に不特定多数の多くのお客様が利用されるので、丈夫に座をコンパネ(12mm厚のベニア)下地仕様で作っているのだろうな、とは思いました。業務用のソファやベンチの場合、使用頻度が激しく壊れやすいので、コンパネ下地で作ることはとてもよくあることです。カラオケBOXなどが良い例です。個室の中では、イスの上に乗って、曲に合わせて飛んだり跳ねたりしている動画をよく見かけます。イスは座るものですという当たり前の前提はこの業界では中々通用しにくくなっています。

でも、今回は使用目的・用途が違います。その木下地の上のウレタンの質や構造が悪過ぎじゃないかな~。クッション性があまりにも悪すぎです。
形はそれほど悪いデザインではありませんし、一見、座り心地もそれなりの感じを予想させるのに、実際に座ったら、期待を大きく裏切った座り心地で残念なベンチでした。

 イスの座り心地は、座が板座などのウッドそのままのイスだから良くなく、クッション仕様だから座り心地がいいとは必ずしも限りません。
座が板座だったとしても座り心地がいいイスもあります。確かに一般的には、座が板座のほうがクッション仕上(ウレタン+張生地の仕上げ)より硬いので座り心地が悪いのが通常です。しかし、今回のように内部ウレタン材が柔らかすぎて、木の下地にお尻がゴツッと底当り感があるものは、決っしてよりいいとは言えません。

 ベッドのマットレスでも同じことが言えますが、座り心地のいいイスとは、座ったときに人体の凸凹に合わせてフィットし、イスと体が接している全体の面で身体の重みを均等に支えて、体重が分散された状態の時が最適な座り心地の状況と言えると思います。
たとえ板座のイスでも座面がお尻の凸凹に合わせて成型されたイスですとか、前から後ろになだらかに人の体形に湾曲して傾斜がかかっているイスは、他と比べ体の重さを分散して受けてくれる為、意外と座り心地がいいものです。
先ほどのゴツッとのソファは、クッション材(ウレタン)こそ使っていますが、あまりにウレタンが柔らかすぎ、結局、フラットな堅い板座に座っているのと同じ感じで、お尻の骨の部分一点で体重を支えている状況になり、体重を分散する構造の木イスに比べて、数段落ちる悪い座り心地のソファになってしまいます。
 反発性のない柔らかいウレタンは材料価格的にも安いものです。(低反発ウレタンは違います)  実際には違うかもしれませんが、ソファの価格を安く抑える為の意図が見え隠れします。
 
 
一般的には、ベンチやソファのウレタンは多層式(堅いチップウレタンと柔らかいウレタンなどを重ねる)がほとんどです。
その構造の場合、チップの厚さにもよりますが、底当り感はなくなるものです。
勿論、コイルバネ、ウェーブバネ、ウェビングベルトなどを使って作ったソファはコンパネ下地式ではありませんので柔らかい座り心地です。しかし、使用頻度の高い店舗のイスなどでは、バネが切れたりベルトが緩んだりの強度的対策のためコンパネ下地にチップとウレタンで作るケースがとても多くなっています。
ウレタンはポリオールとイソシアネートに、発泡剤、整泡剤、触媒、着色剤などを混合し樹脂化させながら発泡させたものですが、配合や作り方でウレタンやチップにも硬さや弾力に多くの種類があります。イスのデザインや構造・使用目的などで使い分けしているわけです。

 ソファやベンチは、張生地で覆われているため、内部がどうなっているか見えません。価格だけで選ぶとすぐ壊れたり、座り心地の悪いものに手を出す結果になりかねません。

「イスの座り心地」は、座の仕様だけではなく、座の奥行・高さ・背の傾斜と形状なども大きくかかわってきます。
そのあたりは、またの機会にお話しできればと思います。

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