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本物?

公開日: : 最終更新日:2019/09/22 紹介

 先日、某テレビ局のカラオケボックスでのご本人登場リクエストの番組を見ていました。コロッケとエバンゲリオンの歌を歌う高橋洋子さんの2人でした。私はカラオケのお客様は若い方が多かったし、何となく高橋さんのリクエストが多いかなと思っていました。
ところが、圧倒的にコロッケの方が多かったのを見て驚きました。
本物の歌手の方より真似をするコロッケのほうをお客様はより見たかったわけです。まあ、その時の状況もありますので、比べる種類のものではないかもしれませんが、「物まね帝王」の人気の本物さを感じました。

 最近の店舗の家具や内装は、アンティーク系・ビンテージ系・レトロ系のデザインタイプが増えている気がします。
アンティークという範疇は、家具業界では以前から確固たる地位があり人気もあります。
100年を越えるものなど、そのキズや摩耗・経年劣化の風合いが歴史を感じさせる家具は、そこにあるだけで周りの空間の雰囲気を変えてまう存在感があるものです。
そのキズが出来た経緯などまで語られるとき、その家具がただの古い家具であることを超えて、1つのストリーを持った歴史を証左するメモリアルに姿を変え、その時を生きた人々の息遣いまで感じられる場合があります。
古き良き時代へのノスタルジーでしょうか。私も、つい見入ってしまうものです。

 しかし最近の施設や店舗では、本物の古い物を使うのでなく、そんなビンテージ感の柄のメラミン化粧板、意図的な仕上:擦り傷・打痕・塗装などでダメージ感を演出したデザインが多くなっています。
メラミン化粧板は、写真で撮った柄を印刷した薄いシート紙にメラミン樹脂・フェノール樹脂を含侵させ、何枚も重ねたプラスチック板です。つまり、人工的に作っていますので本物と違っていくらでも量産・製作できる訳です。もちろん本物の木目のような凹凸製作も可能ですので、一見しただけでは、古材の板と判別しにくいものです。しかも、本物と違い熱やキズに強く、天板やカウンターTOP、什器、壁面などに使いやすい素材です。
また、塗料や塗装方法も色々なものをメーカーが提案してきています。塗る方の多少の技術は必要ですが、アンティークな仕上りや鉄の錆びた感じに塗れる塗料や塗装方法が紹介されてきています。

 当然かもしれませんが、一見、古い使い古した見た目を再現はできても、ある程度の時間をそこで過ごすと、本物の歴史を経てきた独特の空気感までは感じられないのはいかんともしがたいものです。それは、似せる技術という意味では、にせた物=にせ物と言えるのかもしれません。
しかし、錆びた感じ・古いキズの表現や日に焼けた表面などは、その経年感を感じさせる出来栄えのものもあります。その技術者の腕次第では、本物と見比べてもその業界の人でも判別しずらい仕上りのものもあります。 ここまでいくと、この技術はひとつの本物のアートではないかと思えます。

 店舗や施設のイス・インテリアにかける費用には、どうしても予算というものが要求されます。一般論的には予算を掛ければかけるほどいいものができる訳ですが、予算には限りがあります。コンセプトによっては、そこの空間には絶対に本物でなければならない拘りも肝心な事ですが、特に店舗や商業施設の場合には、ここ最近の施工技術・材料の進歩を生かして、似たものの一部利用で予算を使い分けることも一つの手法かもしれません。

 本物使いの議論は他の方に任せるとして、店舗や施設は、工事が完了し家具や備品が納入された後、お客様やスタッフの方が運営されてはじめて完成と言えるかと思います。
そのお店や施設は、本来の目的やコンセプトに沿ったものであることが何より大事な気がします。それこそがより「本物」の施設でありお店であると思います。予算の強弱をうまくコントロールして、その為の使い分けをする事も一つの大事な「本物創り」の能力ともいえるかもしれません。

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