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電話での限界

公開日: : 紹介

 張替えの問合せがありました。
いつも返答に困るのですが、やはり、「張替えはどのくらいかかるの?」でした。
そんなときは、「イスの寸法や張り方、張生地によって違います。」とご返事しています。それでもお客様は、どうしても価格が気になるようです。お客様は、使用年数や座面の傷み具合を電話口で説明して、結局は話が戻って「普通ぐらいの2人掛けソファだったらどのくらいかかるの?」でした。
 人の感じ方や言葉での表現の仕方などは、それぞれ人によって違います。同じものを言葉で表現するにしても微妙な言葉の選び方・受け取り方なども千差万別です。気心の知れた友人同士でも、「え~、そういう意味だったの!?」と、いう場合があったりするものです。まして、初めてお話しするお客様との場合にはなお更です。形状・張り方・手間のかかり方を大きく左右するイスの状態を、初めての人に言葉だけで正しく伝えるのはかなりの困難があります。
現場が都内だったので「タイミングがいい時で訪問日を調整させていただいて、無料でお伺いして現物を拝見させていただくことができますよ。」と、お話ししましたが、何度も金額を聞き出そうとされるので、電話では判断に困ることをお話しました。それでも食い下がられ、やむを得ず、一定の寸法・張生地/m当り定価・張り方を説明して新品の既製品の定価をお伝えしました。
 多分、お客様は金額だけが頭に残って、その条件などの本当のところは、ご理解いただけてないと感じました。基本的に、キコリでは口頭で金額をお知らせするのは、事後でのトラブルを避ける為ご遠慮させていただいています。商品名と定価があるものは変えようがありませんのでお答えしました。お客様が、なんとしてでもお知りになりたかった金額は、恐らくご希望の商品とはかなりの巾があったはずです。勿論、お客様としては概算自体が分ればそれでもよかったのかもしれませんが・・・。
やはりそれから大分たちますが、何のご連絡もあっていません。おそらくもうないだろうと感じています。

 別の日に、他のお客様から店舗のイスとベンチシートの張替えの案件がありました。張地が破れてきたので、張り替えるか、作り変えたいとのことで、金額がどのくらい変わるか2通り出してくださいとのことでした。

オーナーは、開口一番の希望が、ベンチが高すぎるので下げたいとの希望でした。
日を変えて現場を確認・採寸に行きました。
ベンチの台輪はH390で、現場での造り付けです。
確かに、小イスとベンチ両方に座ってみると、ベンチの方が高く感じます。
その為に、ベンチを張り替えるか、新しく作り変えようと思う場合には、ベンチの座厚を薄くしたいと思うのでしょう。
しかしそのベンチ寸法は、奥行450、ŞH450で、対面の小イスはSH430でした。しかも、小イスの後ろがお客様やお店の方が通るメイン通路になっています。結構狭いレイアウトです。そのためにベンチはD450にして背は座面から100ほど開けてH300で厚み60の背当てクッションを取付けています。つまり、座る奥行き寸法は、450から背の厚み60を引いて390になっています。
ベンチのSHを下げたい気持ちはわかりますが、下げ過ぎるとヒザが余って以前より座りにくいベンチになります。

オーナーは、次の用事があるとのことで、後日、ご提案と見積りをお出しすることになりました。
結局、こちらで検討して、ベンチは厚みを10mm薄くしてSH440までにして、更に小イスに10mmのプラパートを付けSH440でベンチと同じ高さに合わせる案で提案しました。
見積書をメールして、説明の電話を入れました。しかし、オーナーは、その案を説明する途中で話を遮り、「何を言ってるの?ベンチを低くしたいと言ったのに、小イスを高くするって何考えてるの?」でした。
・・・う〜ん、私の説明の手順が悪かったのですが、何ともマイナス方向に受け取られた状況を丁寧に説明して行くのはむつかしいものです。特に、顔を合わせている場合はスケッチを描いたり、身振りなどで伝え易いのですが、電話で説明するのは自分の話す要領もありますが相手の理解度の問題もあります。「俺は、そんな細かいこと言われても分かんないよ!細かいことは苦手なんだよ。」と、おっしゃいます。
苦労をして時間をかけて説明して「ああ〜、そうか!そういうことか!」やっと分かっていただけました。

 電話での説明にはどうしても限界があります。
今は、テレビ電話・Skype・LINEなどお互いや現物の姿を映しながら会話できるようになってきました。会議などは便利になりました。しかし、セキュリティなど別の問題も出ています。また、視覚的な問題はハードルが低くなってきていますが、座り心地や手触り・高さ感などの感覚的な課題は相変わらずです。今の段階では、やはりサンプルなどの現物確認しかないようです。

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