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張れないの?

公開日: : 最終更新日:2019/11/25 紹介

「え~?張れないの~。かなり迷って、やっとこの張地に決めたのに~。」
決めていただいてたイスの張地品番を、ご返事頂戴したときのことです。
そのイスは規格品のイスを店舗の意匠デザイン上、オーダー加工で丸くして作るという内容でした。
張地ランクを決めて見積りをして、やっと意匠上の細かい詰めも終わり、張地を決めてもらう段階でした。設計さんのほうで数種類の現物の張地カットサンプルを張地メーカーから取り寄せ、メールで決めた張地名と品番を連絡いただきました。
しかし、ここで問題発生。その張地では、イスが張れないのです。・・・というか、正確に言うと張ること自体はできるのですが、張るのをお勧めできない張地を選ばれたのでした。
イス張り用のサンプル帳から選んだのに張れないなんて、どうゆうこと?っという疑問は当然のことです。
そのイスの場合、形状が3次元のR曲線のあるイスで、しかも、設計さんがセレクトされた張地が厚手の伸縮性があまりない硬いビニールレザーでした。そのため、職人さんが張っていくと、非常に張りにくく、生地がRのラインに馴染まずゴワゴワとなって、シワが寄りやすくなります。どんな上手い職人さんでも、限界があります。伸縮性のある柔らかめの張地ですと綺麗に張れるのですが、この指定された張地の場合は、もし張ったとしても、張地の特性上、シワが寄り過ぎて見苦しい仕上りになるわけです。
つまり、イスの形状によっては「適した張地」と「適さない張地」があり、今回、たまたま相性の悪い取り合せだったということなのです。
ご説明すると、電話口でカットサンプルをいじっていた設計士さんは、「なるほど、確かにそうだね!厚くて硬いね。」とご理解いただけて第2希望の張地でお決めいただきました。

張地の選定に関しては、在庫があるのか、また無かったら次の上がりはいつなのか、の問題は出てきますが、他にいくつか気を付けることがあります。無地のビニールレザー・布の場合には問題ありませんが、柄物や毛足の流れが一定方向に流れているものを選ぶ場合には、イスやソファにどのように張るかの問題が出てくる時があります。特に絵柄などの張地のときは、柄の位置をイスの座や背の中央に配置したいとか、大柄のストライプ柄などで座と背の柄を合わせたいとかの要望があるときがあります。その場合、柄位置を調整する為に張地のロスが発生し、無地の張地より多く生地が必要です。また、張り方で毛足の流れを張地の反物の流れと変えて張りたい(横流れの柄を縦目に張るなど)の要望が出たりする場合もあります。当然その場合には、反物の長手ロール方向ではないので、反物の巾約1200~1300程度の制約がでて、長いソファの場合には継ぎが入る訳です。そのような張地を選んだ場合には当然ですが必要m数が長くなりますし、柄合わせの手間がかかりますので価格がUPします。
でも柄合わせが必要な張地の時ですから、いつもそのようなシーンばかりではありませんが、気に留めておく必要があります。

最近では、撥水加工、ウォッシャブルや防炎加工、Ag系抗菌などの機能が強化された張地も多くではありませんが販売されてきています。張地の繊維加工技術の向上や新しい素材の登場などで、防汚や撥水、防災、衛生面などで安全性・機能性が向上してきています。

「いや~、よかったよ!あの張地とイスのフォルムがばっちりだったよ。逆に、変更してよかったよ。」、先般の設計士さんからお礼の電話と店舗とイスの写真のメールをいただきました。
写真を見ましたが、確かにイスが映えて全体的にとてもいい感じでした。この周りの雰囲気だったら、確かに最初予定していた張地は暗すぎてパッとしなかったろうなと想像できました。
禍を転じて・・・ということわざがありますが、仕事をやっていて稀にこんな状況に出くわします。逆の場合もそうですが、こんな時が一番勉強になるようです。

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