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ベンチシートについて

公開日: : 最終更新日:2019/12/20 紹介

 ある飲食店のベンチシートで、内装の業者様から座面のみの注文を頂きました。スペースがあまり取れないとのことで、座面の奥行を440・厚み50にして背は付けず、お客様はそのまま壁にもたれる仕様とのことでした。
納品も完了し、無事オープンしたようですが2日後に連絡があり、全く同じのを同じ寸法で追加してくださいとのことでした。
別のスペースにもベンチシートを設置したいのだろうと思って、製作してお送りしました。

 約5か月後の事。同じお客様から別の案件で、小イス・テーブル、ベンチシートで一式見積もってもらいたいと、平面図・立面図・イメージパースをメールいただきました。平面図を拝見したところ、今回はベンチシートの奥行は500になっているのに気づきました。
「いや~、ベンチの奥行は450では狭いね!前回の現場で背もたれを付けて欲しいとオーナーさんから言われて、追加で頼んだのを取り付けたけど、狭かったよ~」とのことでした。
「え~、追加あったのは背もたれ分だったんですか?」っと私。
前回のベンチの奥行は440でしたから、追加分の厚みが50でしたので、最終390しか座る面の奥行がなかった訳です。特に対面の既存の小イスと合わせて、座高(SH)を410にしたとの事でしたので、そりゃあ、狭いです!
通常の現場では、ベンチシートの奥行は600~650mmが一般的です。今回は、よほどレイアウト的に余裕が無かったようです。一つの方法として、先に背のクッションを下台の上面位置まで下げて、その前に座面を設置すればよかったのですが、そうするとベンチの奥行が490になってしまいます。奥行440を変えられないとすれば、背厚を35mmぐらいにして、座面から約150mmほど空けてそこから上に背を取り付ければ少しは改善したでしょう。ただし、その場合背の高さをあまり高くしないほうがいいでしょう。
 最初に追加の理由を突っ込んで聞いておけばよかったのですが、後の祭りです。
担当の方と話していて、「そうか!またその店のメンテ工事があるから、そのとき背を台輪上まで下げて直しとくよ。オーナーも気にしてたから。」とのことでした。

 最近のベンチシートは、座のヘタりを少なくするため多少固めのウレタンを使用する傾向です。色々な施設や物販店・お店のベンチシートに座っていて、気になるシーンに時々出くわします。レストランなどで、ビニールレザー張りの多少ヘタッているベンチシートに座っていると、少しずつお尻が前に滑っていって、座りにくくなる場合があります。
テーブル側に前傾で肘をついて座っているときはいいのですが、背にもたれていると少し経つと、お尻がジワッと前に滑りだします。ファミリーレストランなどは、老若男女、不特定多数のお客様がご利用になる訳ですからやむを得ないかもしれませんが、座る高さ(SH)が若干低いベンチシートの場合には、多少背の高い方には なお更この傾向が強くなります。低いSHのベンチシートに座ってヒザが立ちかげんだと、より滑りやすい体勢になってくるからです。
それを防ぐため、座面の後ろを少し下げて傾斜させて製作すると、より座り心地がよくなります。
しかし、老健施設やレディスクリニックの待合いなどに配置するソファの場合は注意が必要です。座り心地はいいでしょうが、足腰の弱い高齢の方は、一旦座った体勢から立ち上がるのに一苦労される可能性があります。またレディスクリニックをご利用の妊婦の方も、ソファ座面に傾斜が付き過ぎるとお腹に負担がかかりますので配慮が必要でしょう。

以前のブログでもお話ししましたが、イス、テーブル、ベンチシートなどの店舗家具は、ある一定の適正な基準寸法がありますが、やはり使用される方の身体的状況や置かれる場所の目的などによって調整して製作したほうがいいと思います。不特定多数のお客様がご利用になる家具は、その設定寸法の判断に迷うことが多いものです。 将来、イスやテーブルが、座る人の体形・TPOに合わせて自在に変化してくれる夢のような機能的な家具がでてくるときがくるかもしれません。AIやロボットの進化はそんな進化も予感させますね。

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