納品後のメンテ
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紹介
数か月前に小イスとテーブルを納めさせていただいた飲食店がありました。
たまたま近くへ行ったので、食事に寄ってみました。昼食時を少し過ぎていたのに、そこそこ混んでいます。私に気づいたオーナー様に遠くから会釈をして、遅めのランチをオーダーしました。ゆっくりと食後のコーヒーを飲み終える頃には、お客様もまばらです。支払いにレジへ行くとオーナー様がおられ、「今日は、わざわざありがとう!家具は好評だよ。」と仰っていただきました。気になるところは無いですかと聞くと、「あっ、そういえば、小イスが床に引っ掛かって、座るときに引き辛かったので、ホームセンターで買ってきたシートを足先に貼ったのよ。良かったんだけど、2・3脚はがれてきて少し動かしにくくなってるけどね。」とのこと。
なるほど、確かに剥がれています。そうか~、「カグスベール」というシートを貼っていました。
このシートは、通常の棚やデスクなど頻繁には動かさない家具はいいのですが、小イスのようによく動かす家具には多少の難点があります。頻繁に動かしていると粘着面や中間層のコルク状のところが剥がれてきやすい傾向があります。特に不特定多数のお客様が頻繁に利用される店舗のイスの場合では、貼り付けタイプは剥がれてきやすいものです。
このお店のイスも、いずれはほとんど剥がれてくる可能性が高いと思われます。その事を伝えると、問題ないものを付けて欲しいとのことでした。イスの足先やテーブルのアジャスターは、床の状況で向き不向きがあります。イスの足先には、何も付けず使用しても問題ない場合もあれば、石材の床で音が気になるとか、タイルカーペットで足先が引っ掛かって出し入れしにくいとか、付けた方がいい場合もあります。今回は「スベイリー」というのがあるので、それにしたほうが良さそうです。急がないよと言われたました。取付け含めて見積書を出しますので、検討してくださいと答えました。
確かに座るとき、イスの脚が床に引っ掛かかったり、背を持って引くには重かったりして座る位置までイスを移動しにくいときがあります。また、逆に席を立ってイスを邪魔になりにくいようにテーブル側に入れるときも、同じような理由でやりにくかったりするのは皆さん経験があるのではないでしょうか。
先日、お客様のところで動かしやすいキャスター付きのイスで打合せさせていただきました。打合せ時に、同行した相方が立ち上がりお客様にお辞儀をして、そのイスに座ろうとしたときでした。横にいた私の視線の端に、彼のイスがジワッと横に動き出した情景が入ってきました。「あぶない!」っと、私は思わず彼の腕をつかみました。間一髪、座ろうとした彼はかろうじてイスの座の無くなった空間に、膝を折りかけた態勢で止まって難を逃れることができました。
お客様はすまなさそうな顔で、「ごめんなさいね。床が良くなくてイスが動いちゃうんだよ。悪いけど、危ないから動かないようにイスをつかんで座ってね。」とおっしゃいました。
すると相方、「大丈夫です、ちょうどエアチェアを研究していたとろですので・・!」と変なボケ。
床はフローリング仕上でした。フローリングはどうしてもその場所場所で床の凸凹が発生しやすい仕上げ材です。特にワックス掛けがしてあるとキャスター付きのイスは軽い力で簡単に動いてしまう時があります。無防備に座ると大変危険ですね。
今回はキャスターが付いているイスだったので特殊なケースかもしれません。しかし、通常のイスでも立ち上がるとき、膝や腿の後ろ側がイスの前面に当たって、まれに軽くイスが後ろへ動く場合もあります。イスの形状や重量・重心、脚先と床の仕上の条件があうと、そうのようなケースは特別ではありません。イスはそこの環境において適度に引きやすく、適度に押しやすい(入れやすい)のがいいですね。
当然ですが、イスの出し入れの音や床の傷も大いに気になります。床の状態に合ったプラパートなどの緩衝材を上手に利用すると良いでしょう。
以前のブログ「隠れたアイテム、イスのプラパート」でも紹介していますので、ご参考ください。
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